アフリカ アグリビジネス・林業担当
ワシントン本部勤務
学生時代から国際開発、特に貧困問題に興味があり、最貧国のひとつであるマラウィの田舎に赴いてボランティアをしました。そこで最も印象に残ったのは、マイクロファイナンス機関から融資を受けている服の仕立て屋を訪問した時に出会った、事業について熱く語る起業家の希望と自信に満ち溢れた笑顔です。途上国の事業支援を通じて、あの笑顔を引き出す手伝いがしたいという当時からの想いは、今も変わっていません。
大学卒業後は、民間セクターで幅広く経験を積みたいと考え、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)株式会社に入社しました。金融機関の業務効率化に関わるコンサルティング案件を担当した後、もともと興味のあった開発金融に携わるため部署を異動し、途上国の官民連携(PPP)・インフラ事業の民間資金調達のためのフィージビリティスタディも経験しました。念願の国際開発案件に取り組みながら充実した日々を過ごしていましたが、同時に、「第三者としてサービスを提供するだけでなく投融資を通じて当事者として事業に関わりたい。」、また、「日本政府・日本企業の枠に囚われず国際社会に貢献できる仕事がしたい。」という思いも芽生えてきました。そこで思い切ってPwCを退職、INSEAD MBAに留学しました。在学中、80カ国以上から集まったクラスメートと、各国のケーススタディを議論したり、将来のキャリアプランを語り合ったりする中で、開発金融への想いを再確認しました。夏休みにはIFC香港事務所のインターンとして実際に途上国の企業の投融資業務に携わりました。インターンを通じて、IFCの持つ途上国での豊富なノウハウとINSEADに負けないくらいの多国籍な職場環境を目の当たりにし、私のやりたい仕事がここにあると確信しました。卒業後は、希望通りIFCグローバル・トランザクション・チーム(現ヤングプロフェッショナル・プログラム)の一員として入社することになりました。
IFCでの1年目、ワシントンDC本部にて金融セクター部門住宅金融部にアソシエイト・インベストメント・オフィサーとして配属されました。住宅金融はそれまで縁がなかったため、当初は戸惑いましたが、その分野のスペシャリストに教わる中で、とても興味深い業界だということが分かりました。例えば、住宅ローンは貸し出し期間が長期にわたることが特徴ですが、長期資金の確保が難しい途上国では、金融機関が顧客に住宅ローンを提供できず、提供できても金利が高くなるといった問題があります。そこで、IFC投融資チームが金融機関に対して長期資金を提供し、またアドバイザリー部門が業務改善の支援を行うことで、低中所得層を含む多くの人々が住宅ローンを借りられるように支援します。さらに、低中所得層が購入できる価格帯の住宅の供給を増やすことを目的にIFC製造業・不動産チームと連携し、住宅金融市場の機能を円滑化するため規制整備を担当する世界銀行と連絡を密にしたり、または「住まいは基本的人権である」と世界銀行グループ理事会に呼びかけ加盟国政府の支援を仰いだりと、あらゆる角度から途上国の生活環境の改善に貢献しています。このように他業界や政府を巻き込んで課題解決を進められるのは、世界銀行グループならではの仕事の醍醐味だと感じています。
IFCでの2年目は、グローバル・トランザクション・チームのローテーションでナイロビ事務所 アグリビジネス部に移りました。クライアントは、サブサハラアフリカで事業を展開する先進国の大手上場企業から現地の同族経営の会社まで幅広く、また、IFCが提供するのは資金調達だけではありません。例えば前者に対してはパートナーとなる可能性のある現地企業の紹介、後者に対してはコーポレートガバナンス・アドバイザリーの提案等、IFCのネットワークとリソースを最大限に活用して支援します。また、案件はゴム農園やフルーツジュース製造工場、鶏の食肉処理場等、多岐にわたります。農家の方々に話を伺い、商品の製造工程を見学し、商品を味わったりしながら、案件を精査していく過程はいつも驚きと発見の連続です。アフリカでは市場データ等が限られているため、足で情報を稼ぐことももやりがいの一つです。
私が現在担当しているクライアントは、ある国の田舎で事業を成功させた現地の起業家です。彼を見ていると学生時代に抱いた初心を思い出します。ボランティアだった学生時代は話を聞くことしかできませんでしたが、今の私のミッションは、パートナーとして彼の事業の成長を支援することです。案件が成功した暁にまたあの笑顔に出会えることを楽しみに、日々奔走しています。