プリンシパル・インベストメント・オフィサー/ Principal Investment Officer
ニューデリー事務所勤務
12年余り勤めた日本の銀行を辞めIFCに転職した一番の理由は、死ぬ前に一度IFCのような国際機関で働いてみたいと思ったからです。職場の雰囲気が合わず数年で辞めることになっても、それはそれでいいや、辞めたら東京に戻って職探しをしよう。そうなっても、IFCでの経験は私の人生のスパイスになるだろうし、後悔はしないだろうと考え転職を決意しました。当時の私は、世界中から金融や環境・法務等、各分野のプロが集まっていて、発展途上国への投融資の分野では世界の金融機関から一目置かれているIFCは素晴らしい職場に違いないと信じていました。
さて実際に入社して分かったことは、IFCは私の期待を裏切らないところだったということです。職員は文字通り多種多様で、同僚と昼食を一緒にするだけで世界で起こっている出来事の背景が分かったり、世界中の歴史や文化を詳しく知ることができます。また、IFCは非常にフェアな組織です。国籍、人種、宗教、性別、年齢、学歴等、職員のバックグラウンドは個人の業績評価に全く関係なく、IFCの業務に貢献し結果を出す等、良い仕事をした人が尊敬され評価されます。実際、仕事中に同僚のバックグラウンドを意識することはほとんどありません。外見や文化的背景がこれほど異なる仲間達とチームを組んで、共通の目標(途上国の貧困削減と生活水準の向上)のために一緒に全力をつくせるIFCという職場は世界の中でも極めて稀で、かつ、とても魅力的であると(入社後8年以上たった)今でも思います。
IFCに入社してから思いを強くしたことは、途上国の民間セクターの発展をサポートすることにより貧困を削減するというIFCの役割が、年々重要になってきているということです。これまで何度となく途上国に行き様々な人達と話をしました。いつも強く感じるのは、途上国の人々は外国からの経済援助をありがたいと思う反面、自国の民間企業が成長し利益を上げ雇用を増やし、企業や従業員が納税して国庫に貢献することにより、一刻も早く外国からの援助に頼らなくてもよい状況にしたいと思っているということです。IFCは途上国の政府からも民間企業からもその役割を非常に期待されており、その期待に応えるために職員が一丸となって仕事に取り組んでいます。
私は2004年にIFCに入社し、最初の8年間ワシントンで主にアフリカの民間インフラプロジェクトへの投融資を担当しました。極めて国際色豊かなワシントンのオフィスで、世界中から集まった同僚達といろいろな国のプロジェクトを担当できたのは刺激的でかけがえのない経験でしたが、いつか途上国の事務所に出てワシントンで得た経験を活かしてみたいと思うようになりました。その後、IFCダッカ事務所(バングラデシュ)にインフラ投融資チームを創設すると聞き応募、ダッカ事務所の初代インフラ担当オフィサーとして2012年8月にダッカに赴任しました。
バングラデシュは2008年に始まった世界金融危機による影響をそれほど受けず、安定的に年率6%程度の経済成長を続けています。また、ゴールドマンサックスが発表した「ネクスト11」(BRICs: ブラジル、ロシア、インド、中国に次ぐ)新興11経済国の一つになっています。しかし、電力・道路・港湾等のインフラ不足が大きな問題となっており、脆弱なインフラが今後の経済成長の深刻な阻害要因になると考えられています。バングラデシュでは急速なインフラ整備ニーズに対応するため、民間の資金やノウハウを活用したインフラプロジェクトを進めており、IFCはそのような案件を積極的に支援しています。当事務所では、私が赴任してから現地のアナリストを一人採用し、現在私と二人体制でバングラデシュのインフラセクターを担当しています。また、近々もう一人採用しチームを三人体制に拡大する予定です。
バングラデシュは世界最貧国の一つですが、経済は現在急成長中で人々は豊かな生活を夢見て日々懸命に働いています。困難な環境の中で家族の幸せや国・企業の発展のために懸命に働く人々と共に、この国の経済発展のために働けるのは幸せなことであり、また大変なやりがいを感じています。私がダッカを去る時にバングラデシュの人々から「裕二バハイ(ベンガル語で「裕二さん」の意)とIFCチームのお陰で随分バングラデシュのインフラが整備されたよ」と言ってもらえるように頑張りたいと思っています。